2022年度、SSP-IPでは『知的財産で社会を変える:SSP-IPの挑戦』の出版を目指しています。
現在は、ゲーム(TKP)やeスポーツ(R3K)に関する研究プロジェクトに取り組んでいますので、SSP-IPが対象とする「知財」なるものが、ゲームやeスポーツといった領域に偏っていることはあきらかです。しかしこれはあくまでもファーストステップにすぎません。そして、じつはここに、『知的財産で社会を変える:SSP-IPの挑戦』の目的のひとつがあります。つまり、SSP-IPの、いわば守備範囲をお示しすることです。また、かり仮に「知財」をひとまずゲーム/eスポーツに固定するとしても、そこからアプローチ可能な「社会問題」はじつに多様です。そのいくつかをご覧いただくということが、本書のふたつ目の目的になろうかと思います。
「知財と社会問題」の星座(constellation)
□巻頭対談:ゲームとジェンダー、ポリティカル・コレクトネス
〈社会・教育〉
・ゲーム実況
・キャラクターによる多文化共生理解
〈精神保健・福祉〉
・ゲームによる精神分析カウンセリング
・ユニバーサルeスポーツ
〈地域・文化〉
・IPと地域活性化
知財の森は、あくまでも深く、社会問題のテクスチャーは、あくまでも微細であるということを、あらためて痛感しているところです。このさき、道に迷うこともあれば、目がくらむことも多々あるでしょう。ですがこれは、否応なく、引き受けるしかありません。すでに述べたとおり、「知財」といい「社会問題」といい、これらは「説明対象」としても「説明原理」としても、初手から自明視してかかるわけには到底いかないほど複雑だからです。
最後になりましたが、対談やインタビューなどつうじて、本書の成立にあたってご協力くださったすべての方々に、あらためて感謝申し上げます。また、すでになされたことよりこれからなすべきことのほうが多い、その意味では「成果」というよりは「宣言」といった性質が色濃い本書ではありますが、読者のみなさん皆様におかれましては、ここからわれわれSSP-IPのポテンシャルのようなものを感じ取っていただけたら、所長として、これにまさる喜びはありません。
知財と社会問題研究所 所長 竹内孝宏